ここまで44の作品を巡ってきたわけですが、ここで蛇足を一つ。
毎回ちょっとしたテーマや気になったことから連想して
その時巡る映画を決めるのですが、
気付けば映画探訪も45ということでテーマすら思いつかなくなってきています。
『フォレスト・ガンプ/一期一会(1994)』
最近食べたチョコが美味しかったので、
「チョコ」にまつわる台詞が印象深いこの作品を巡ることにしましょう(笑)
◆あらすじ◆
チョコレートを手土産にバスを待つフォレストは、
居合わせたバス待ちの人に話しかけ、
自分のこれまでの人生について思いを巡らせる。
補助器具を付けないと歩くのもままならなかったこと。
生まれつき知能指数が低く、学校に入るのにも苦労したこと。
女手一つで育ててくれた母親は、特別扱いすることなく、
愛情たっぷりに、真っ直ぐに自分を育ててくれたこと。
人とは少し違うせいでいじめられていた学生時代に、運命の女性に出会ったこと。
いじめっ子から逃げているうちに、補助器具なしで目にもとまらぬ速さで走れるようになったこと。
その脚を買われてラグビーにスカウトされ大学にまで行けたこと。
戦時下で、親友の死や頼れる上官の挫折を目の当たりにしたこと。
そして、時折自分にぴったりの事柄に没頭したこと。
何かに一途に取り組むと、周囲にいろんな人が現れては去っていったこと。
それでもただ一途に走り抜けたこと。
そして今、運命の女性に会いに行くためバスを待っているということ。
なんと言えばいいのか、こう、泣ける映画!名作!みたいな
定番の感じなのかと思っていたら全然そんなことはなくて、
全体的に気負いのない印象の映画でした。
社会風刺を含んでいるブラックユーモアの光る内容ではあるのですが、
最初から最後まで主軸はフォレストの思考であり、
潮流とかは関係なく、知り合った一人一人の言葉を受け止め、
自分がどうしたいのかを選んだ結果が作り上げた人生の回顧録。
類稀なる運の良さを持っているのはもちろんですが、
持ち得るもの以上を求めず、自分の気持ちに正直でいたからこそ
多くの人に恵まれていたんだろうなと思います。
全体的に軽く柔らかく、応援したくなるような絶妙な空気感。
登場人物も、誰もが人間臭いのにフィクションっぽくて、
アルバムを見ながら思い出話を聞いているような感覚でした。
思い出話って自分の主観で振り返るからか、
思い出深い人や物事を大げさに表現してしまったりするじゃないですか。
その感覚に近いんじゃないかなと思います。
そういえば、「チョコにまつわる台詞」を紹介するのを忘れていました。
『Life is like a box of chocolates. You never know what you're gonna get.』
(人生はチョコレートの箱みたいなもの。開けてみるまで中身は分からない)
フォレストの生きる軸ともなった母の言葉です。
斜に構えた心をいったん捨てて、素直な気持ちで観るのがオススメ。
ある意味で、自分のひねくれてしまった部分を矯正してくれるような映画と言えるかもしれません。
骨格矯正のための補助器具のおかげで身も心もまっすぐ育ったフォレストのように、
我々もまっすぐ生きてきたいものです。