ずっと気を付けていたのにとうとう蚊に刺されてしまいました。
そんなことはさておいて、
蚊取り線香の匂いを感じると夏が来たなと実感しますよね。
ということでそんな夏に読みたい一冊をご紹介。
『MOMENT(2002)』
総合病院で清掃のアルバイトをしている大学生の神田君が
病院内でまことしやかに囁かれていた
「末期患者の願いを一つだけ叶えてくれる仕事人」として奔走するお話です。
伝説の仕事人の正体は神田君ではありませんが、
とある勘違いと、それに応えてしまったことから物語は始まります。
ひたすらにドナーを待つ少女、癌に蝕まれる孤独なOL、
神田君は様々な出会いを通して考え、悩み、どんな決断をするのか。
余談ですが、内容を思い出すためにレビューを見ていたら、
皆さん主人公を「神田君」幼馴染を「森野」と呼んでいて、
神田君は「神田君」なんだよなぁと改めて思いました。
神田君の初々しさ故でしょうか。
些細な話ですが、数多いる読者がそういった
印象を共有しているのってあまりないことだと思います。
実写化した時にキャストで賛否両論別れるのをよく目にしますが、
この作品ではそれはなさそうだなと。余談ですね。
MOMENTはいくつかの章に分かれていて、中でも
レビューで一番支持を集めていたのは『FIREFLY』。
末期がんのOLの最後の願いとして、一日限定のデートをするお話です。
小さい頃からFireflyと聞くと脳内にトンボが浮かんで
しまうのですが、トンボじゃなくて「蛍」ですね。
童謡の“赤とんぼ”の影響か、「firefly=茜色=トンボ」と脳内変換されてしまいます。
そんなどうでもいい話は置いといて、『FIREFLY』は
いくつかある章の中で一番綺麗なお話という印象でした。
物語として重く心に引っかかる部分がない感じ。
個人的な感想として、他の物語は読後に尾を引く暗い部分があるんですが、
このお話は綺麗に糸を断ち切ってくれていました。
それこそ朝日が昇ると見えなくなる蛍のように、
光に溶けても、まだそこで光っている。
そんな読後感です。
読んだ後にほろ苦くなる話が多い中で、
FIREFLYを読み始めた時は若干警戒していたんですが、
思った以上に綺麗なお話だったのでむしろ虚を突かれました笑
勝手なイメージですが、MOMENTのあらすじを読んだ人が
最初に思い浮かべるであろう内容はFIREFLYの雰囲気かなと思います。
姉妹作、兄弟作も出版されているみたいなので、
今年の夏はそちらを読んでみようかな。