お久しぶりです。というより初めまして。
その10という大台に乗った今回ですが中の人が変わりました。
そんなことはさておいて、本の紹介をしていきましょう。
前回は恋愛がテーマの短編集『君はポラリス』を紹介させていただきましたが、
春風のように爽やかな内容から一転、今回は冬の山村を舞台にした凍えるような
サスペンスをご紹介!
『雪と毒杯』。著者は修道士カドフェルシリーズで有名なエリス・ピータース。
イギリスで発表されたのが1960年、日本で出版されるのが2017年。1995年に著者であるエリス・ピータースが亡くなっているので、ファンにとっては思いもよらない嬉しいサプライズだったようです。
半世紀以上前の作品ですが、
『2018年 本格ミステリベスト10』では海外ミステリ第2位にランクインしています。
あらすじとしては、往年のオペラ歌手が逝去するところから物語が始まります。
ウィーンで歌姫の最期を看取った近親者8人が帰国のために乗った飛行機が悪天候で雪山に不時着。何とか辿り着いた小さな山村では、吹雪の為にしばらくは外部との連絡が取れないとわかる。仕方なく山村に一つだけあるホテルに滞在することにした8人。
そこで歌姫の遺言状の内容が明かされた時、悲劇への幕もまた降ろされてしまう。
クローズドサークルが出来上がれば、そりゃあ殺人が起きるわけで(そんなことはない)
探偵不在のなか誰が謎を解き明かすのか、動機は何なのか、縺れる人間関係の向かう先は…
などなど、読み手としては探偵という味方がいないため、もしや…まさか…と色々と勘ぐってしまいますが、
ミステリー好きな方なら『ザ・古典』という内容なので読み通り!となる方も多いかも。
重厚なミステリーというよりは軽やかに、まさに雪山を滑り落ちるように結末へ向かっていきます。
個性的な登場人物それぞれに背景があり、ロマンスもあり、張り詰めるようなアクションもあり、
なにより読んでいるだけなのにその場に遭遇しているような細やかな場面描写は引き込まれます。
ぜひ、秋の夜長のお供にイギリス古典ミステリーはいかがでしょうか?