オススメの本44『自由研究には向かない殺人』 。
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夏の読書感想文で紹介した本の続編を読み終えたので、
二冊まとめて紹介しようと思います~!
二作目『優等生は探偵に向かない』(2022)
女子高生誘拐殺人事件を解決し一躍有名になったピップは
友人から行方不明の兄を探してほしいと相談を受ける。
しかしピップ自身は前の事件で殺されかけたショックもあり
今後探偵の真似事は一切しないと心に決めていた。
家族や周囲のためにも普通の女子高生に戻りたい自分と
正義を追求するべきだと訴える自分との狭間で葛藤するピップ。
その間にも友人の兄の命の期限は近づいていて。
三作目『卒業生には向かない真実』(2023)
二つの事件がもたらした結果に、ピップの心は悲鳴を上げていた。
付きまとう不安や恐怖を誰にも相談でないまま、なんとか表面だけは平静を保つ日々。
コントロールできない感情に怯えるピップを追い込むように、
謎のストーカーからメッセージが届き、
それはかなり前から、徐々にピップの傍へと忍び寄ってきていた。
次の被害者は、自分自身。
2作目は一冊だけでも読めなくはないけど、
3作目は筆者自身が三部作と言っているように、
シリーズ通して読まないと意味が分からないと思います。
前日譚となる短編もあるみたいですが、これは読んでも読まなくてもという感じ。
シリーズを読んでみてもっと掘り下げたいと思ったら読めばいいかなと。
SNSとは一定の距離を取っているタイプの自分からすると、
主人公たちが当たり前にやっているSNSでの発信や、
社会との距離の取り方は未知との遭遇という感じでした。
もちろん舞台が海外って言うのもあるんでしょうけども。
と、話が本題から逸れましたが、
第一部だと割と爽やかな青春ものって感じなのですが、第二部以降は結構重く、暗く。
1作目の特徴でもありタイトルでもある「優等生が事件を解決する」部分が
徐々に端へ端へと追いやられていくのがなんだか寂しくもあり、
自分の中にある必ずしも善とはいえない正義に葛藤するさまが痛々しくもあり、
この三部作を青春ミステリから一段上に押し上げていたように思います。
(3作目はミステリの皮を被ったクライムサスペンスだった気もする)
特に3作目。中でも異色で好みが分かれると思います。
個人的には「面白い/面白くない」「納得できる/納得できない」を反復横跳びして、
最終的に「やや面白く、やや納得できない」に落ち着いたかなと。
ただ、序盤~中盤までは後者に向かって猛ダッシュしている感じでしたけどね(笑)
終盤の巻き返しと、最後までどう転ぶのかわからない展開は見事でした!
というか、ミステリの感覚で読み進めている中で、
急にサスペンスにハンドルを切る感じなので、
思考の切り替えが追いつかないと気持ちの置きどころが迷子になります。
正義はどこに存在するのか。
司法で裁かれなかった罪は、訴えの届かない被害者は、
SNSにあふれる不特定多数の“大衆”は、どこに存在するのか。
個人の正義執行はどこまでが正しくどこからが悪なのか。
そう言った現代っぽい問題提起を分かりやすくしてくれるいい作品でした。
ヤングアダルト小説の括りに入るらしく、
有名どころだと「トワイライト」「ハンガー・ゲーム」あたりと同じジャンルです。
あちこち揺れて、時に突っ走る主人公の言動は、
第三者の視点でみると納得できないところもありますが、
終わり方もまとまっていて、個人的には楽しんで読めました。