映画探訪も気が付けば30になりましたね。
外で観るのは控えているので、動画配信サービスに
登録しようかと思いつつ、それをしてしまうと
生活が疎かになってしまう気がして何となくためらっています。
30という節目に巡る映画は、大切な一作を選びました。
『チョコレートドーナツ(2012)』
実話から着想を得て作られた映画で、
昨年12月に世界初の舞台版公演が日本で敢行されたので、
そちらも観劇してきました。
言葉で伝えるのが難しい作品なのですが、
この機会に、感想を綴ってみようと思います。
◆あらすじ◆
舞台は1970年代のアメリカ。
ショーパブで日銭を稼ぎながら暮らすゲイのルディは、
隣の部屋に住む薬物依存の女に辟易していた。
ある日ショーパブで出会った検事局に努めるポールと恋に落ち、
家に帰ると、隣の部屋の女が薬物所持で逮捕されたと知る。
その上、女にはダウン症の息子がおり、
家に帰るために保護施設から脱走を繰り返していた。
ダウン症の少年マルコをかわいそうに思ったルディは、
ポールを説き伏せ、二人の関係を「いとこ」と偽りマルコを引き取ることを決める。
まるで本物の家族のように、三人の生活は愛で溢れていた。
けれども、ポールの職場に二人がゲイであることがバレてしまうと、
周囲の目は冷ややかであり、マルコの養育権を巡って裁判で争うことになる。
日本で公開された当初、上映した映画館は1つだけ。
皮肉なことに、プロモーションをしようにも、
ゲイと障がい者の映画なんて紹介できないと断られ続けていたそう。
けれども、短観上映にも関わらずその反響は大きく、
上映館数は増加し上映期間も大幅に延びました。
先入観なく観てほしいので詳しい内容には触れないでおこうと思いますが、
そうしたら書くことに困ったので舞台の感想でも書こうかな。
主人公がドラァグクイーンということで、
ミュージカルのような演出が多く、悲しいお話を
悲しくさせすぎない、緩急の有る演出になっていたように思います。
映画のストーリーの中で特に印象に残っていた
マルコの家出場面が大幅にカットされていたのが
個人的には少し残念でしたが、それを補って余りある
役者さんたちの熱量が客席まで伝わってきました。
カーテンコールの際には、マルコ役を演じた役者さんが
楽しそうに大きく手を振ってくれて、
会場が暖かい笑いで包まれて閉幕。
物語の結末はハッピーエンドとは言えませんが、
きっと観た人の心に深く残る作品だと思います。
暖かくて、残酷で、どうしようもなく遣る瀬無くて、
でも前を向いている。
慌ただしい毎日の中で、一旦足を止めてみる。
そんな時間のお供に「チョコレートドーナツ」はいかがですか?