クリスマスが近づき、イルミネーションが華やかに街を彩る季節になりました。
クリスマスが過ぎればあっという間にお正月。
今回紹介する小説も、そんな年始のNYが舞台のお話です。
『ニューヨーク1954(Night life)』
ずっと前からこれ書きたいなぁと思っていたのですが、
タイトルの年号部分が思い出せず、調べることが出来ずにいた作品です。
ハードボイルドな感じの海外ミステリー作品で、
著者が映像界隈出身とのことなので、
ところどころの映像的な描写がピリリとしびれます。
◆あらすじ◆
冷戦真っただ中の1954年のアメリカ、ニューヨーク。
若い男が拷問を受けて死亡しているのが発見され、
ニューヨーク市警の刑事キャシディが事件を調べ始める。
被害者は何かで誰かをゆすっていたようだが、
その「何か」は国家の問題に深く関わるようで、
是が非でも他の誰にも知られずに「何か」を手に入れようと
FBIが捜査に介入してくる。
さらにはCIAやKGBまでが事件の背後にちらつきはじめ、
構わず捜査を続けるキャシディの家族にも魔の手が伸びる。
様々な思惑のど真ん中で、綺麗も汚いも関係ない、
あらゆる手段でもって真っ向から陰謀に立ち向かっていく。
脚本家出身の作者が送る現代のハードボイルド作品!
冒頭からファッション用語が飛び交い、当時の海外ファッションに
明るくない自分はそれだけで若干出遅れました(笑)
主人公キャシディはブロードウェイの有名脚本家の息子で、
父親はロシアからの移民でありハンサム(そのせいでCIAに難癖をつけられるわけですが)。
倉庫を改築した建物の最上階に住んでいて、女性からの誘いは引く手数多。
相棒のオーソーは逞しい体躯の長身でお洒落好き。
給料4か月分のスーツを身に着け爪の手入れも怠らない。
お見舞いには赤いリボンのついた高級チョコを差し入れるような奴です。
粗野で安月給なくたびれた警官が多い中、良くも悪くも浮いてしまいがちな二人が
世界観にフィクションっぽさをプラスしていて、お洒落さに一役買っていました。
その他の登場人物も、本の中で生きているというよりは
ドラマに登場するような浮世離れした人物ばかりで、
分かりやすく言えば「半沢直樹」の登場人物のような、
こんな人現実にはいないけど魅力的だよね~な感じです。
レンガ造りの外観の倉庫っぽさが残る建物の最上階、
夜景を見ながらお酒を酌み交わす男と女。
片や事件を追う刑事、片や秘密を握る関係者。
言葉遊びの裏にあるのは嘘か真実か。
ハードボイルドといえば私立探偵マーロウなど
当時の雰囲気が色濃く映し出される昔の作品が思い浮かびますが、
その昔ながらの雰囲気を残したまま、
より映像的に昇華させた現代のハードボイルド作品。
テレビや映画などのツールが発展した現代の読者こそ
より鮮明に物語に浸ることが出来そうな、そんな作品でした。