8、9、10と続けて、ハッピーとは言い難い映画だったので、
今回はハッピーな映画を探していきましょう!
その名も『幸せの絵の具(2016)』
「幸せのレシピ」と迷ったんですが、
そちらは内容がうろ覚えだったのでこちらをチョイス。
タイトルに「幸せ」と入っている映画で考えるという
なんとも安直なことをしてしまいました…。
安直とはいえ、本当にいい映画なので、
この機会に知ってもらえたら嬉しいです。
◆あらすじ◆
重いリウマチで手足がうまく動かせないモードは、
絵を描くことが何より大好きだった。
ある日、住むところを失ってしまい、
家政婦募集の張り紙を出していた家に荷物をもって押しかけていく。
雇い主の名前はエベレット。
孤児院育ちで学もなく無骨で粗暴だが仕事には真面目に取り組む男で、はじめこそ酷く当たられていたモードだが、彼女が小さな幸せを絵にしていくたび、エベレットはそれを受け入れるようになる。
二人の生活に絵が存在することが当たり前になった頃、
ご近所さんの友人夫婦が見守る中、小さく粗末な二人の家でささやかな結婚式を挙げる。
絵のことも、人の心も、上手に受け取ることが出来ないエベレットの言動は時にモードを混乱させ、エベレット自身も混乱して。
そうして少しずつ歩み寄りながら、小さな小さな二人の小屋で、二人は幸せを紡いでいく。
男の一人暮らしで雑然としていたただの小屋は、
物語が進むごとにモードの絵によって彩られていきます。
お互い器用じゃないので、
言葉が足りずに傷つけてしまうこともあります。
それでも、手足がうまく動かないモードの特等席は、エベレットが引く荷車の後ろ。
喧嘩した後、迎えに来たエベレットの荷車に乗って
いつものように揺られているモードの嬉しそうなことと言ったら。
この映画は、モード・ルイスの実話をもとに作られたものですが、
エンドロールでは、実際の二人の当時の映像が流れます。
(※ちなみに画像は早期観覧特典でもらったポストカードです!)
こう、言葉で表現するのは難しいんですが、
その言葉に出来ない「幸せ」がたくさん詰まっていて、
胸がいっぱいになりました。
モードもエベレットも、決して恵まれてはいませんでした。
過酷な自然環境に、周囲からは奇異の目で見られ、
貧しいながら二人なりの愛情表現と対話をもって、
幸せを切り取って絵を描く。
エベレットは決して献身的ではないけれど、
モードを支え、不器用ながらモードの喜ぶことを考えて。
伝わらないもどかしさ、表現できない思い、
エベレットを演じたイーサン・ホークの演技は一見の価値ありです。
あまり言葉を交わさない中で、二人の関係が深まっていくのが
空気感を通じて肌で感じることが出来る。
幸福を感じるシーンがあるのではなく、
この映画全体が「幸せ」。
演技派で名高い主演二人の演技も含め、ぜひ観てほしい一作です。
ちなみに、カナダでは大変人気の高い画家なので、
二人が暮らした小屋が美術館に常設展示されているそうですよ。